雲海といえば、「北海道トマムの雲海テラス」や「兵庫竹田城の絶景」を思い浮かべる方が多いと思いますが、ここ秩父にも観る者の心を魅了する幻想的な雲海が発生します。
明治期の地理学者「志賀重昂(しが しげたか)」はその著の中で、日本の風景における水蒸気の重要性について説いていますが、秩父の雲海はまさにその変化する風景のダイナミズムを身近で堪能できる貴重な存在だと思っています。
今、注目を集めつつあるこのスポットの魅力を少しだけお伝えできたらと思います。
深夜3時、寝静まった街に広がる夢見ごこちの風景
まず、この写真は深夜3時に撮影したものです。
夜半から発生した雲海は市街地を低く覆い、街明かりを水蒸気の粒子に反射させ幻想的な姿を見せてくれます。
街が深い眠りにつく間、文字通りもう一つ夢心地の風景がそこに広がります。
うねり声すら聞こえてきそうな雲海の姿
日の出の直前、水蒸気の発生量が一気に高まり最も雲海らしい状態へと変化していきます。
この時点で見えている秩父ハープ橋も、この5分後には一度すっぽりと雲海に飲み込まれました。
そっと耳を澄ませば水蒸気のうねる音が聞こえてくるようです。
まさしく「水蒸気の国のダイナミズム」
日が昇り、雲海は文字通り霧散していきます。
それまでの雲海風景とは違う、まるでSF映画のワンシーンのような非現実感に満ちた絶景がほんの数分間姿を現します。
僕はこの瞬間にこそ〝水蒸気の国のダイナミズム“を最も感じることができると思っています。
ご紹介した写真は秩父ミューズパークの同じ場所から撮ったものですが、時間と条件によって全く違う雲海風景を楽しめることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
次回の雲海はどんな表情で迎えてくれか今から写真家の胸は高鳴るばかりです。