こんにちは、編集長のあざみっくすです。
秩父で活躍する人々を特集する「ちちぶの人」。
今回は少し違った角度で、秩父に関わっている方をご紹介します。
埼玉県本庄市児玉町在住の「前川翔太」さん。都内の企業に勤める24歳で、大東文化大学在籍時には政治学科にて”まちづくり”を学んでいらっしゃいました。
そんな前川さんが、大学卒業に合わせて「秩父市のまちづくり」を論文としてまとめました。
前川さんの論文「秩父のまちづくり」はこちらからご覧いただけます
この論文を拝見し、非常に秩父のまちを深く理解し、魅力をまとめている内容でしたので、ぜひ話を聞いてみたい!と思い、今回のインタビューが実現しました。
4年半で150回も秩父へ通う
———本日はよろしくお願いします。前川さんはなんとこの4年半で150回以上も秩父を訪れているそうですね!そこまで秩父にハマったきっかけはなんでしょうか。
アニメの「あの花」がきっかけです。
その作品にハマったことから、舞台となった秩父をみてみたい!と思い、自分の住んでいる場所から近いこともあったので、ちょくちょく秩父に通うようになりました。
———最初に秩父に来た時の感想はいかがでしたか?
2段階の感動があったんですよ。一つ目が秩父に入る瞬間、もう一つが秩父の街並みを見た時。
まず、最初に秩父に訪れた時は、真冬にママチャリで2時間かけて秩父まで行きました(笑)。(しかも雪が降った翌日で道路が凍っていた!)
児玉から秩父を目指すと、秩父に入る前に間瀬峠(まぜとうげ)という場所を通るのですが、そこから秩父盆地を見て感動をしたんですね。
秩父の街、うっすら雪化粧の武甲山、それらを盆地という地形でパッケージされた場所。こんな景色は初めて見ました。
そして、いよいよそこから秩父の街に入っていくと、アニメで見た街並み・景色があり、それも非常に感動的でした。
アニメの舞台がそこに広がっている、という感動ももちろんありましたが、何より素朴な街並みが、僕にとっては新鮮でした。
———なるほど、感動が二段階あったんですね。そこから、何度も秩父に通うようになった経緯は?
当時は「あの花」のコラボイベントやグッズがたくさんあったんですね。それらを求めて、何回も足を運ぶことになりました。そして、秩父に訪れるたびに新しい発見があり、次第に「秩父」そのものの魅力にハマっていきました。
また、写真も趣味でして、毎回新しい景色を求めていたのも、複数回訪れることの要因の一つでもありましたね。
秩父独特の「閉鎖性」が人を惹きつけている
———前川さんが、どんどん秩父の魅力にハマっていく姿がリアルに伝わってきます(笑)。ところで、前川さんの論文も読ませていただき、とても深く秩父のことを研究されていて、単純に「面白い」なと思いました。特に印象的なのがポジティブな意味合いでの「閉鎖性」という言葉です。
これは、秩父を研究している千嶋寿氏の文献にあった言葉なんですが、秩父って本当に特殊で、武甲山や街、川などが盆地の地形として綺麗にパッケージされていると思うんです。
それこそ、間瀬峠から秩父を見た時の感動そのものが、パッケージ化された街でした。「閉鎖性」というと、人々も内側に向いてしまい、コミュニティなども閉鎖的なのでは?とネガティブに捉えられるかもしれませんが、僕が感じたのはポジティブな印象の「閉鎖性」です。
初めて間瀬峠から秩父を見た時に感じた感覚を言葉で表すと 、まさに「閉鎖性」だったのかなと。
———「パッケージ化された街」、とても面白い表現です。また、論文の中で秩父の観光について書かれていますよね。前川さんが思う秩父の観光の課題とはなんでしょうか。
宿泊をして秩父を楽しもう、というPRができてないことだと思います。
そもそも、秩父は都会から近いことがメリットである一方、日帰り旅行になりやすいことがデメリットでもあります。
大抵の観光客は、昼から夕方の時間だけで秩父から帰ってしまいます。
でも実は秩父には時間によって様々な表情があるんです。朝は雲海や日の出とともに見える武甲山、昼はいつもみんなが知っている趣ある街並み、夜は壮大な星空や夜景。
これらは住んでいる人にとっては当たり前の景色ですが、外の人から見ればとても幻想的。外の人の私が言うのですから間違いありません(笑)
それらを体感してもらうには、やはり秩父に連泊をしてもらいたいと思うんですよね。
先人と同じ思いを辿れたことが大事
———今回の論文を通して、一番の発見はなんでしたか?
そうですね、自分が感じたことは、先人が同じように感じていた、ということですね。様々な文献を読み漁りましたが、僕が秩父に対して感じていたことを言葉で表現しているケースが多く、その度に自分が感じた感覚に自分自身が納得していくことができました。「閉鎖性」という言葉もまさにそうで、やっと自分の感覚にマッチする言葉を見つけることができた!という感動もありました。
———今回、このような論文をまとめられましたが、前川さんは今後、どのように秩父と関わっていきたいですか?
秩父を外から見て、課題や魅力を見つけ発信していきたいと思っています。
その経緯としては、雲海写真家の田中健太さんに「前川さんの外からの視点が秩父にはとても大事」と言っていただいたことがあります。
やはり、地元に根付いている方と、外の目線を持った方では感じ方も違いますし、考え方も違います。田中さんはそういった点を理解されていると思います。だから、外の目線を僕に求めていただいたのかと。
その外からの目線の課題・魅力発見が、秩父のまちづくりの参考になっていったら良いなと思っています。
———なるほど、わかりました。本日はありがとうございました!
「秩父」に魅了されて、とことんハマりついには論文まで書き上げてしまった前川さん。その経緯を語る姿を見ると、自然と訪問回数も増え、行くたびに秩父の魅力が発見されて行く様子を見て取れました。
秩父に住んでいる人が、「何もないところ」と言っている街が、外の人から見れば、いくらでも魅力が発見できる場所であるのはとても興味深いですね。
「ちちぶる」でも前川さんのような魅力発見の視点を持ち、新鮮な切り口で秩父をさらに掘り下げて発信していきたいと思います!
前川翔太さんのプロフィール
1992年生まれ、大東文化大学政治学科 卒業
2012年 3月に初めて秩父に訪れ、その後現在まで150以上、秩父に訪問している
大学の卒業論文として、秩父のまちづくりに関する論文を執筆