こんにちは!ちちぶるインタビュアーのKaoriです。
今回のインタビューは、秩父市でイタリアンレストラン「サルベージ」を経営する坪内浩シェフ。
サルベージでは、なんとお店で使う野菜を100%自給自足で、なおかつ有機栽培で育てています。自家製のピザ生地は、小麦の栽培から行なうというこだわり!
一見すると手間がかかりリスクが大きいように思える経営スタイル。なぜそこまでこだわるのでしょうか?坪内シェフの胸の内に隠された、熱い想いに迫ります。
秩父の”地の利”を知り尽くした自社農園

サルベージの野菜たちは、口に運ぶ最後の最後まで命がみなぎっていて、一度食べると忘れられません!私も大好きでよく通わせていただいています。 今の時期は、どのような作物が旬を迎えているんでしょうか?(※2017年3月初旬に取材)
今は春野菜が増えてきて、菜の花の収穫が始まっています。菜の花は植物に頭が立った状態のことですが、うちでは白菜やのらぼう菜の菜の花がありますよ。収穫時期が少しずつ違うので、まるで週代わりのようにさまざまな菜の花が楽しめます。
他には、ブロッコリーやカリフラワー、ベビーリーフなどがあります。

パスタにも旬の野菜がふんだんに使われている
柔らかくて甘みのある、春らしい野菜たちですね。さっそく食べたくなってきました!ところで、お店で使う野菜の全てを自給自足でまかなわれているということですが、1年を通して何種類くらいの野菜を育てていらっしゃるんですか?
年間で約150種類の野菜を育てています。
150種類も!そんなに品種があると、育て方や管理が大変ではないですか?
ここまで多品種で栽培が出来るのは、秩父の自然環境のおかげなんです。
秩父は盆地で、夏は38度を超えますが冬にはマイナス10度まで下がります。1年を通して50度以上の寒暖差があるということは、四季の移り変わりが色濃く出ます。
僕は、その気候の変化を活かしてシーズンごとに違った品種を育てているので、結果的に多種多様な野菜を育てることができます。
季節ごとで全く違った野菜を育てることができる、ということなんですね。
その代わり、一つのシーズンが非常に短いため、農業をやる者にとっては大変です。野菜の収穫時期があっという間に終わってしまうので。
でも、秩父は温かい地方で獲れる柑橘類が栽培できる一方で、寒い地域で獲れるりんごも栽培が可能です。つまり、”みかん栽培の北限”と”りんご栽培の南限”の両方が交わるところが秩父。そんな魅力もあるんですよ。
そうなんですか!それは面白いですね。
秩父は、土壌にも大きな特徴があるんです。
土壌、ですか?
はい。北部エリアは花崗岩などのような砂岩を含む土壌ですが、南部エリアは非常に粘土質です。この狭い地域に性質が異なる二種類の土壌が同居しているという特徴も、多品目栽培ができる理由の一つです。
お話を聞いていると、厳しい自然環境をチャンスに変えて農園経営をされていらっしゃる様子が伝わってきます。秩父の自然環境はものすごくユニークで、色んな可能性を秘めているんですね。
重度のアレルギー症状に苦しんだ幼少時代

畑はすべて有機栽培を実現されていると伺いました。有機栽培は、収穫量が安定せず難しいと聞いたことがあります。なぜ、そこまでこだわっていらっしゃるんでしょうか?
実は、僕は小さい頃にアナフィラキシーショックが出るほど重度のアレルギー体質で、一般に販売されている食材はほとんど口にすることができなかったんです。
20代の頃に再発し、当時経営していたお店のメニューを全て変えなければいけなくなったこともあったんです。
それは大変なご経験でしたね。
はい。でもそんな時期を経るうちに、「僕はたった一口食べただけで、何が入っているのかを身体の反応で知ることができる。これはきっと神様がくれた才能なんじゃないか」と考えるようになったんです。
そこから、今のような経営スタイルに辿り着いたという経緯があります。
「食べられるものが売っていないなら、自分で作ればいい」と思ったのが原点です。僕と同じようにアレルギーを持った方でも、楽しんでいただける料理が提供できれば嬉しいです。

店内には手作りベーコンや採れたて野菜がところせましと飾られている
食べたいものが食べられないって、大きなストレスですよね。坪内シェフは、そんな辛い時期を経験されたからこそ、食べられる喜びも“ひとしお”でしょうね。
自分で野菜を作るようになると、だんだん食べられる食材が増えていくんです。「あ、今年はこれが食べられるようになった」っていう感動は、何物にも変えられません
地産地消ならぬ「友産友消」を大切にしたい

サルベージのメニューを見ていると、坂本ファームさんの武州豚、小松沢農園さんのイチゴといったように、生産者のお名前をよく目にします。食材選びにはどのような考えをお持ちなんでしょうか?
単にオーガニックで安心な食材というだけでなく、せっかく買うのなら生産者として同じ想いを持つ友人から買いたい。地産地消と良く言いますが、僕は「友産友消」を大切にしています。
「友産友消」。素敵な言葉ですね。
もともと友人でない場合でも、必ず生産者と実際にお会いして自分の目で確かめたものや、信頼する方から仕入れるようにしています。
イタリアンを通して日本の魅力をもっと拡げたい

イタリア政府認定学校より、賞を受賞されたそう
料理人の仲間とも交流をお持ちとのことで、2017年2月には南越谷のイタリアンレストラン「オルタッジョ アルベロヴィラッジョ」の木村シェフとコラボディナーイベントを開催されていました。同じ埼玉県内で活躍するシェフとのコラボレーションには、どのような想いがあったんでしょうか?
今回のディナーイベントでは、世界的に活躍するイタリア人シェフのジュリアーノ氏を呼んで、当店と木村シェフのレストランの両方でイベントを開催しました。
あえてスタイルの違った料理を作ったり、木村シェフのような仲間とコラボレーションをする理由の一つには、埼玉のイタリアンレストランのレベルアップを図りたいといういう想いがあります。
素晴らしい取り組みですね!ただ、同業者なのでライバルになる、ということはないのでしょうか?
木村シェフのレストランとは、同じ埼玉でも東と西に離れているのでライバルになりづらいという利点があるんです。今回のようなイベントを通して、スタッフの教育や情報交換を積極的に行ない、ともに成長していけたらと思っています。
レベルアップをした先には、どのような未来像を描いていらっしゃるんでしょうか?
イタリアンレストランと言っても使う食材には国産のものが多く、時には和食のエッセンスを取り入れることもあります。
郷土料理のことももっと勉強し、日本の魅力を拡げたい。時代のニーズに合わせて、現代でも楽しめるイタリアンを提供したいと思っています。木村シェフは同じ使命感や志を持つ、心強い仲間です。
子ども達のために”仕事”を遺したい

今回のディナーイベントに限らず、西武秩父鉄道の観光列車「52席の至福」で提供される食事メニューの開発や、世界ブランドとなったイチローズモルトの大麦栽培など、もはや料理人の域を大きく超えて活躍されていらっしゃいますよね。なぜ、そこまでの情熱をお持ちなんでしょうか?
人口減が問題視されている秩父ですが、その大きな理由にビジネスが成り立たないことがあると思っています。反対に、仕事があれば、きっと人は出て行かないはず。
僕は自分の子どもも含め、次の世代の若者が秩父を出ざるを得ない状況にならないよう、秩父に仕事を遺したいんです。例えば、京野菜のように「秩父野菜」というブランドを作るとか。そんなことを本気で考えています。
秩父でそういった理想を実現できるように、今の仕事を続けていきたいですね。
本日はありがとうございました!
語り出すと止まらない、坪内シェフの情熱に終始圧倒されっぱなしのインタビューでした。畑から届けられる新鮮な野菜とすばらしい料理には、坪内シェフの未来にかける想いがたくさん詰まっていたんですね。
4月からは一時お休みしていた週末のランチ営業も始まるそうです。坪内シェフの想いがつまった渾身の一皿を、私も味わいに行ってきます!
坪内 浩さんのプロフィール
野菜ソムリエプロ・有機農業家
幼少期から重度のアレルギー症状に苦しみ、それがきっかけとなって有機農業と自給自足型イタリアンレストラン「サルベージ」の経営に繋がる。
西武秩父鉄道の観光列車「52席の至福」で提供される食事メニュー開発に携わる。その他にも秩父食材を使った商品開発や大手企業にレシピ提供を行なうなど、多方面で活躍中。
サルベージのランチを取材した記事はこちら!